真っさらな空を切る、一羽の不如帰。




高い声を降らすそれは、
大地を二色に分けて対峙する俺達を見下ろして、何を思うか。


沈黙。
だが、静かでは無い。
空気を震わせるのは、鼓膜を破らんばかりの気迫だ。


大地の震え馬達の震え武士達の震え甲冑の震え武器の震え
全てが震え、空気を揺らし、ぶつかり合い、睨み合い、殺し合い、叫んでいる。



武器を振るえ!
武士よ奮えよ!




沈黙を、法螺が裂いた。
地響きが雄叫びとなって唸りをあげて、闘いの太鼓が叩かれる、
嗚呼、それでも。


俺は、息を吸う。
未だ硝煙に血煙に塗れる前の美しい最後の空気を、肺一杯に、満たして。





「Are you READY GUY's ーーー?!!!!」





答える雄叫びが響いた空には、
不如帰。



 
るに、

 いえに、帰ろう。



其れは,、
何時でも変わらずに、この背中に在る、
ただひとつの、場所。

戦場を駆け抜けるこの足が在る限り、
俺は其処へゆくことが出来るのだ。





「、次、生まれて来る時は、鳥になりてぇな、」

囁いた夢は音にもならずに、
朱に染まろうとする世界、に潰される。




足元から這い上がる光。
俺の前に見えていた背中が堪らずに駆け出して、赤を散らす。
握る柄。迸る雷撃。
後ろに在った静かな気配が色を変え、聞こえてくるのは敵の悲鳴だ。
跳ねる心臓。
俺の塞がれた視界の中で、彼が刀を構える硬い鍔の音が響く。
迫り来る、敵。




駆け抜けるのは俺の脚、振るわれるのは俺の腕、巡り滾るのは俺の血。
其の全てが止まらない戦は止まらない世界は止まらないおれは生きている!

ああ、だからこそ、







こ の ゆ め が か な っ て く れ る の は 、 も っ と 、 ず っ と 、 さ き の こ と 。









最期に思うのは。
伊達政宗。

奥州筆頭、独眼竜。



〜07,02,20