走れ走れ走れ走れ走れ









身体中で鳴り響くサイレン達が叫ぶ。


後から追いかけてくる、足音、殺気、怒声、雷鳴、月光、
その全てから、

俺はひたすらに、逃げていた。




ぱたぱたと服を叩き始めた雨を見上げる。


続々と集まってきた雷雲たちの隙間で、

真っ赤な満月が、

閃く嵐に飲み込まれまいと、必死に足掻いていて。

その姿はまるで俺の様で、酷く惨めで哀れだった。




雨脚は強くなる。








そうだ、もっと降れ。










肌を叩く雨も吹き付ける風も轟く雷鳴も全部全部全部。












俺ごと世界を洗い流せ・・・!!












背中から聞こえていた怒声たちや、
目の前の視界が全部雨に包まれていっても、

あいつ、の気配だけは、だんだんとハッキリしてくる。












狭く狭く真っ暗な籠の中で生きてきた俺の、唯一つの“
希望”が、其処に居る。












泥濘に足を取られてバランスを崩したけれど、構わずに走った。


真っ赤な月が喰い殺されて、其の悲鳴が雷鳴となって閃く。








急げ急げ急げ急げ急げ

走らなければ、お前も同じ末路、と。








背中を押す雷霆の声に、俺は足を速めた。













ばちばちと身体を打つ雨音と、

ばちばちと燃え上がる雷を受けた木々と、

ばちばちと何かが破裂している、俺の脳内と。















何が間違っているのか誰が正しいのか俺は生きているのか・・・!?
















ばちばちと音を立てて全てが破裂していく様がとても綺麗で、

世界の破滅と自身の破滅を強く想ったけれど、


此処で死ぬ訳にはいかないんだ。



























まっかな、つき、は、 もう  い な い 。

































肌を伝うものが雨なのか、涙なのか、



俺にはもう、判らなかった。





























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39.トラウマパンク