初めて、彼を見た時、
なんて小さい人間なのかと思った。


身体だけの話ではない、
その視線、言動、行動、結果、
それらを導き出す尺度そのものの小ささに、俺は愕然としたものだ。


しかし違う。
確かに小さい。
しかしそれは俺の知り得るものと明らかに違うものなのだ。

それは、酷く衝撃的であった。


その時折みせる広さ、深さ、柔らかさは恐ろしいほどで、

ああこれがボンゴレの血なのかと、思い、


そしてその中に自分がいられる居ても良いのだと、
その血を与えられたファミリーだという喜びが、俺の全てで…。


けれど、
いつからか、
俺はその血全てに俺が在れたならと考えていた自分に、何よりも愕然とした。



「獄寺君、」



少し驚いた彼の声が、人気の無い昇降口に響く。
そして、補習時間かかるから、先にかえっててって言ったのに、と言いながら、
照れたように笑った。


俺は何か言いながら首を降って、
彼は、ありがと、と言って靴を履いた。



藍色に変わる夕空に星がいくつか見える校門への道中、
彼の右手が、
俺の震える左手を捕まえた。

今日夕飯カレーなんだよ、食べていくでしょ、と言いながら揺れるリズムは、
少し汗の滲んだ体温に溶け込んで、
そうして掌は融接されて、俺の左手の神経をどろどろと蕩かしてゆく。


そのことが堪らなく幸福で、

そのことに堪らなく貪欲で、


それら全てが堪らなく恐ろしい。



「、獄寺君、?」



広く深く、余りにも小さな眼が、夕闇を吸って陰った。
それはさながらカフェラテにエスプレッソが注がれるよう。

それに触れようと伸ばした手が、やはり震えてしまっていて、
俺はただすみませんと繰り返し、



ひどく恐ろしいのです、
この脳での暴動を鎮圧出来ないのです、
俺は墜落する機体の中で息も出来ずに焼け焦げて、


「 大丈夫だよ 。」


小さく零された貴方の声が、ぽたりと鼓膜に垂らされる。

淡く混ざるクリームが、琥珀の湖面を塗り変えて。




ちいさな彼。
その手がおれの背に触れて、髪に触れ、頬に触れ、
余りの熱量におれは呼吸することもままならずあなたのなまえをよぶことすらできずにふかくひろくおそろしいほどに
こがれてやまないそのめにその血に熔かされておれはしずんでゆく。

いつか、このひだりて、で、あなたをつかまえたまま、共に沈んでゆきたいと望みそうで、おれは震えているのです。





悍ましい劣情のカプチーノ。
溢れるまでに飲み干して。
叶うならば貴方に。







震える、
震える、震える左手。
あ や す よ う に 抱 い て く れ た 彼 の 全 て が 融 接 し て し ま え と 思 う 俺 は … 、








ふるえるひだりて

〜07,06,21