「守ります。」
俺は笑顔で彼にそう誓う。
「俺が、貴方を、お守りします。」
彼は、美しいその深い血を湛えた眼で、俺を見詰めてくれている。
その眼に記憶に思考に、出来るならば、彼の左にある心臓の右側に、俺が、あれるようにと。
俺は祈り、切に願いながら、誓う。
「俺が貴方に、傷ひとつつけさせません。だから…」
「お前さ、」
音と一緒に紫煙があがる。
二筋青空に昇っていくそれを、開け放たれた窓からぼんやりと眺めながら、
俺はクーラーのかかる室内に逃げ込むように、そのままぱたりと腰掛けていたベットに倒れた。
シワの無い白いシーツは、灰を落としたら二度と汚れが落ちない気さえする。
硬い洗剤の匂いは、こんなヘビースモーカーの中年が居座る部屋なのに、薄れることはない。
案外、というか、そもそもこの男はこの部屋に余りいないのではないか、と思い至って、
なんとなく納得しながら、俺は窓から煙が高く空へ昇るようにと吐き出し続ける。
今、自宅か何処かの修行の場にいるであろう彼からも、見つけてもらえないかなあとぼんやり思った。
「ボンゴレの坊主は、てめえなんぞに守られてるような器じゃねーだろ。」
その知ったような声に苛立ちながら、俺の脳裏に焼き付いて離れないのは、
避雷針さえ焼き切ってしまう炎を纏う彼の姿だ。
一瞬、ぞくりとさえしたあの彼と、こんな紙ヒコウキさえ打ち落とせない俺の、
どちらが強いかと問われれば、一目瞭然であるけれど。
「…そりゃあ、特訓で、」
「そうじゃねえよ。」
十代目だって、並々ならぬ努力を積んだに違いないのだから、
そう続けようとした俺の言葉を遮って、男が言う。
「“そっち”じゃねえよ、ハヤト。」
昔と変わらぬ、知ったような声。
白いベットを囲む白いカーテンの隙間から、シワのついた白衣の背中が見えた。
ゆらりと昇る煙。
知ったような、否、知っている(、ただ俺がそれを肯定できずにいる、)声。
「黙れスケコマシ。」
吐くようにそう言った俺に、
深い溜め息が応えた。
「これだからガキは…、」
掠れたつぶやきと共に、疲れた扉がぴしゃりと閉じる。
「…じゅうだいめ、じゅうだいめ、じゅうだいめ…、」
空いていた手で目を覆い、甘い暗闇の中でその名を囁けば、
俺の心臓は強く打ち、どくどくと血を巡らせ、
おれをつよくする。つよくしていく。つよく、
ああ、お願いします騙されていて。
どうか気付かないでいてください。
聞かないで、見付けないで、触れないで、どうか・・・、
「、まもります、…おれが、あなたを。」
俺の小さな掌に囲われた闇の中で、尚も囁き、尚も祈り、尚も誓う。
その嘘で、あなたに隠したかった。
お れ は 、 こ ん な に も 、 よ わ い 、 の で す !
〜07,12,13 その嘘で、あなたに隠したかった
雷戦後、嵐戦前。おっさんとスレガキ。