「…、ぅ、…」
ひゅ、と息を飲む音にギクリとすれば、
少年の手が、更に白くなるほどの力で布団を掴んでいた事に気付く。
思わず扉を開けて、そのまま部屋に足を踏み入れれば、
少年の、けして穏やかでは無い息の音が聞こえてきて、
俺は思わず彼に呼び掛けていた。
「おい、おい…!大丈夫か…?」
返事の代わりに、少年は小さく呻きながら、更に苦しげに眉を寄せて、
俺は、思った以上に症状が悪い様子に、自分の体温が下がるのを感じながら、
更に声を張り上げて、その細い肩を揺さぶる。
思いの外鍛えられた骨と筋の感触に驚いたのだが、
それ以上に、シャツ越しにも熱いと分かるその肌に俺は息を飲んで、
半ば引っ掴むようにして枕元のナースコールを押した、のだが。
そこに繋がっていなくてはならないはずのボタンは、
何の抵抗も無く、腕を引いた俺の手の中に納まっていて、
短いコードの先が、…ぷらり、と俺の腕に当たった。
「…なんで切れてんだよ…!くそッ!!」
叫んだ拍子に足元に落ちてきたナースコールの残骸から、
明らかに人為的に切り離されたような、鋭利な刃物で切断されたコードの切り口が覗いて、
俺は先程の痛いほどの殺気を思い出した。
「一体、誰がこんな事を…。」
思わず呟いてハッとする。
今は犯人捜しよりも、一刻も早く少年を医師に診せなければならない。
何処に医師の詰め所があるか見当も付かないが、
ともかく、自分の足で誰かを呼んでくるしかないのだ。
張り付いた前髪を払ってやろうと、触れた額は酷く熱く、
だが、何処か冷え切ったその肌は、生気というものから見放されたようで、
俺は何故だか、自分でも驚くほどに、それに対して恐怖を覚えた。
「…待ってろ、今医者を呼んでくるからな…!」
聞こえているかなど分からなかったが、
俺は、うなされ続ける少年にそう告げると、
少し乱れた布団を綺麗に掛け直してから、扉へ駆け出そうとして…。
「…、うるさい…、」
唐突に鼓膜に触れた、聞き慣れぬ音に、俺は思わず動きを止めた。
今にも部屋を飛び出そうとしていたポーズのままそちらを見やれば、
ふ、ぅ、と熱を吐き出すように溜息をつきながら、
その白い瞼が、ゆっくりと開く。
現れた、その熱に浮かされて朧な黒いめに、
俺は自分が息を止めている事にすら、気付いていなかった。
〜07,11,16
病室にいるパジャマのきょうやにもえすぎて。